山根一純の「伴天風水」デザインで
たてる住宅

正倉院式ログに見るログハウスが地震に強い理由

2022年05月12日

「伴天風水」創設者の山根維随です。

以前の記事で、地震には縦揺れと横揺れがあり、本当に怖いのは縦揺れだということがわかったと思います。

>>地震に強い家、ログハウスの実証例について

そして、その縦揺れに対抗するのは、筋交いの家であることもわかりました。

洋風建築に出会って以来、日本人には何となく旧来の 木で作った日本家屋よりもコンクリートやレンガを使ったものの方が地震に強いのではないかというイメージがあったように思います。

それはビル建築など大きな建物が洋風建築で建てられ、どっしりとした安定感のようなものがあったからではないでしょうか。
しかし、日本にも古くからの建物がいっぱい残っています。例えば奈良県にある正倉院は木造建築物として世界でも最古級のものです。

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正倉院が地震に強い理由

1250年もの間、震度6以上の地震を40回以上も経験し、現在に至っています。
ということは、地震に対しての強さは現代の建築物より高い訳です。

その耐震性は私の実験では、なんと一般住宅の13倍にもなります。
では、なぜそれほど正倉院が地震に強いのでしょうか?

その秘密の一つとして「力の分散」が挙げられます。

地震に強いと言われるログハウスの場合でも、5 トン以上の曲げ応力が加わった場合、木材は折れてしまいます。
しかし、正倉院建築方法の場合、一方向にかかる力を3軸方向に分散させる組み方により、建物の強度を高めているのです。

木材というのは、5トンの曲げ応力で折れることはあっても、なかなか潰されることはありません。100トンの力を加えられても耐えられる性質を持っています。

つまり、木材が折れてしまうような方向からのエネルギーを、潰す方向のエネルギーへと向きを変えることにより、車などに使われているショックアブソーバーのような消震材として、その耐性を有効に利用しているのです。

さきの福島県林業試験センターでの実験で一般住宅だと300キロの荷重まで耐え、ログハウスでは1トンと書きました。
私どものラインナップに日本を代表する建築物である正倉院を研究して、その組み方で作ったログハウス、正倉院式ログというのがあります。

この組み方だと4トンの荷重でも壊れません。

300キロと4トンでは数字上は13倍も違うわけです。
実際に実験後の木材を調べると、木組みをしたところにうっすらと線が入るぐらいで、潰れてもいません。

つまり、地震の曲げ応力を潰しエネルギーに変えて地震を消してしまったのです。
この組み合わせの部分で地震動を吸収してしまうのです。(この木組で特許を取得しました)

さらに正倉院の魅力を付け加えておくと、正倉院方式で建てられた住宅の屋内は、温度と湿度の調整機能に優れていることが挙げられます。
室温は季節や昼夜により若干変動しますが、湿度は常に大体60%を保ち、人間が快適だと感じられる値を保ってくれています。

わざわざ高価な除湿機や加湿器をつけなくとも、自然に湿度が調整されるのです。正倉院御物が今に伝わっているのも、この構造のおかげです。

そのような機能的にも優れた正倉院の建築方法を、一般住宅にも応用すれば、本当に地震に強い家をつくることができると私は考えました。そして正倉院式ログとして完成させたのです。
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現代工法と歴史が証明してくれる安心感を合体させ、災害に強くしっかりとした家を実現しました。

>>ログの家(木と住むという選択)

この記事の執筆者

山根 一純

もくもく村創始者
NPO法人 幸せな家づくり
研究会理事長

山根 一純やまね いずみ

昭和60年4月、環境保全業を立ち上げると、日本でも住環境が注目されるようになり、私は意を決して「もくもく村」を創設しました。健康な生活は住まいからという信念で、当時問題となっていた「シックハウス症候群」を一切排除しようと立ち上がったのです。

元来、日本には春、夏、秋、冬という季節に合わせた先人たちの住まいの工夫がありました。今では生活が便利さを追求するあまり、私たちの身の回りには化学物質があふれ、かつてはなかったような病気に悩まされています。それは私たちの生活の基盤である「住まい」にまで及んでいます。

新築、リフォーム、転居などで、住宅に使用されるホルムアルデヒドなどの化学物質によって引き起こされるアレルギー症状が、今でも私たち、子どもたちを脅かしています。安価で便利な化学物質を使用した工業製品による健康被害をどう解決していくべきかという問題は深刻なのです。

私は、日本の四季に合った、住まう地域に合わせた先人たちの住まいの知恵を取り入れた家づくりに注目しました。森に囲まれた自然環境と暮らしの展示場「もくもく村」を開設したのは、私のそんな思いからなのです。

ご来村された皆さんに、「健康で幸せな家族」になるためには「安心できる家」があってこそ、という思いを共有していただきたいからです。そのために、行っているのが有害な化学物質を一切排除し、工務店では不可能に近いといわれる「完全無添加住宅」のご提案です。

風水デザイン設計で細部までこだわるゆえに、柱の数の多さは、他社と比べてはるかに多い。どこまでも妥協しない家づくりです。住む家族みんなが自然素材の持つエネルギーにつつまれて、心身そのものが本来の健やかさを取り戻します。

さらに「水や木にも心が宿る」言霊を信じている私にとって、住まうご家族のことを思う心を一本一本、新築の木々に念願することによってご家族をお守りすることができることを強く信じております。

このことは科学的根拠という領域をはるかに超えた、哲学的な直観領域です。その直感力を高めてくれるのが「私たちはおおいなる命の循環の中に在る」ということを常に感じさせてくれるこの地の大自然です。

「もくもく村」は、大地の匂いのする家づくりを皆様にご体感していただける唯一の森の中の総合展示場となっています。