仲間
チェスとミミ

「近頃、このへんに野犬がうろついている…」
そんな噂を耳にしていた。ある朝、もくもく村に着くなり、異様な光景を目にしてしばらく声が出なかった。かわいがっていた小さいウサギたち5匹が小屋から引きずり出され横たわっていたのだ。事態が呑み込めて、はじめて涙がこぼれた。
「あの野犬たちの仕業だ!」
そう思うと恐怖と憎悪で、二度とここに足を踏み入れてほしくないと思った。
その野犬2頭は、すました顔をしてやってきた。お腹がすいているのだろうか、食べ物を欲しがってやってくるようだ。よく見ると獰猛な顔をしていない……なぜか憎めない顔をしている。動物学校を出ているスタッフのTさん親子も「あの犬がやったのではないと思う…」と言う。
この犬たちの味方は3人だけで、みんなはウサギを殺したにくい野犬だと思っていた。
また牙をむくから「あぶない!」と言う。誰かが通報したのだろう、ある朝、役所の人と保健所の人が来た。野犬を捕まえるといって、網の棒を振り回す。でもなかなか捕まらない。
その追いかけっこの光景を眺めているうちに、「うちで飼います!」と、自然と口に出ていた。二頭の野犬はうちのスタッフに付き添われ、健康診断とワクチンと登録とすべて済ませ、晴れてもくもく村の一員になった。2022年年頭の出来事である。
名前はオスをチェス、メスをミミちゃんと名付けた。もくもく村「創始者」に大きな犬小屋を作ってもらい、朝はTさん親子が散歩してくれる。以来、もくもく村の大切な仲間となったのである。




